不動産エージェントと

各専門家の役割と活動範囲

元・住宅情報誌編集長の不動産エージェントが解説!

アメリカの不動産取引では、契約成立(エスクロー開始)後に不動産エージェントが、各専門家との分業化・役割分担により、物件引き渡しを効率的に進めるシステムが機能しています。契約に関わる専門家は、不動産エージェントの他、住宅ローンオフィサー(モーゲージブローカー)、エスクローオフィサー、ホームインスペクター、アプレイザー(不動産鑑定士)、タイトル会社(権原調査保証会社)などですが、その役割分担についてご紹介します。

A-1-5-1_Real estate agent roles

1.不動産ブローカーとエージェント

<ブローカーとエージェントの関係>

ブローカーは州の免許を得て不動産流通業務を営むことができる業者です(日本の宅建業者)。売買契約の主体はブローカーで、契約に関する責任を負います。

不動産エージェント(日本の宅建主任者)は、州が定める試験に合格し、ブローカーが経営する不動産会社に所属契約して、ブローカーの監督の下で不動産取引業務を推進します。業務の対価として顧客から支払われるコミッションは、ブローカーに対して支払われ、エージェントはブローカーからその内の一定割合を受け取ります。

<コミッション>

アメリカでは不動産取引のコミッション(仲介手数料)はセラーが全額負担します。日本では不動産流通取引の仲介手数料は、売主、買主それぞれが自分の側のエージェントへ支払いますが(売買価格の3%+6万円が上限)、アメリカではセラー側、バイヤー側の業務に発生するコミッションの合計額をセラーが負担し(合計で売買価格の6%程度)、セラー、バイヤーのエージェントはそれを折半した割合で受領するのが一般的です。

<エージェントの役割>

不動産取引では、エージェントはバイヤー、セラーそれぞれの顧客に対して、細心の注意と誠意、忠誠心を持って行動する義務を担い、それぞれの意向を代表して活動します。

バイヤー側の不動産エージェントはSelling Agentと呼ばれ、顧客の条件に合う物件を検索、紹介し、見学をアレンジして同行し、物件のコンディションや売買に当たっての注意点などをアドバイスします。購入希望物件へのオファーを作成し、それを受け入れてもらえるよう交渉し、契約開始後はバイヤーのインスペクションやディスクロージャーを一緒にレビューすると共に、物件のコンディションに問題がないかなど確認していきます。また、ローンやエスクローのプロセスが適切に計画通りに進むよう進行管理していきます。

セラー側のエージェントはListing Agentと呼ばれ、物件の売却依頼を受けた後、MLSへの登録、ポストカードやフライアの作成と配信・告知、オープンハウスなど、販売活動を行います。オファーの受領、契約開始後は、バイヤーのインスペクションへの協力やバイヤー側との交渉に当たります。

アメリカの不動産情報はMLSというシステムに登録されていて、不動産エージェントは過去の取引事例や所有者の情報など詳細を調べることができます。これらの情報は不動産エージェントに公平に提供され、また主な情報は民間の不動産ウェブサイトにも提供され、一般の人も情報収集が簡単にできる状況となっています。従って、不動産エージェントの役割としては、物件情報の提供よりも、購入物件に問題がないかという判断や、購入手続きの進行やオファーや契約中の交渉、購入後のケアなどが重要となってきています。

 

2.住宅ローンオフィサー

住宅ローンオフィサーは、住宅購入の際のローンの貸付、またローンの借り換えの専門家で、不動産取引ではバイヤーのローン借入れを実行する重要な役割を担います。住宅ローンの貸付審査はリーマンショック以降、年々厳しくなり、提出書類は煩雑を極めていますが、エスクローの限られた期間の間に、申告、不動産鑑定、ローンの審査がスムーズに進むよう推進します。

3.エスクローオフィサー

エスクローオフィサーは、売買契約を公正に行うための第三者機関として、売買契約書に基づく契約に関する条件の調整、書類の手配・確認、精算などを行います。

4.タイトルカンパニー

登記上の名義の書き換え手配、それに際して登記上の債務などがすべてクリアとなり新しい所有者の名義と抵当権設定を保証する会社です。

5.アプレイザー(不動産鑑定士)

不動産の適正価格を客観的に評価する不動産査定(appraisal)レポートを作成する専門家で、州の認可を受けた資格者で、金融機関からの発注を受けて、物件の担保価値を確認するために鑑定を行います。査定方法は「近隣の類似物件の売買価格」「同様の物件の新築コスト」「予想賃貸収入」などを総合的に勘案しながら、見積もりを作成します。

6.ホームインスペクター

契約成立(エスクロー開設)後、バイヤーが物件のコンディションを調査する際に雇う専門家。屋根や床下の状態から、室内ではキッチンやバスルーム等の水回り、設備機器や電気系統などの作動状況や故障の箇所、修理の要否を調査し、レポートを作成してくれます。これとセラーから提出される物件に関するディスクロージャー書類の内容を踏まえて、バイヤー側には契約を最後まで履行してよいかどうかを確認する機会が与えられています。